CURATION
2025/06/17
不動産の買付証明書とは?提出前後の交渉・手付金まで実務で解説
不動産売買で、買主から
「この物件を買いたいです」
と言われたら、次に出てくるのが「買付証明書」です。
不動産営業を始めたばかりの人だと、
「とりあえず買付を書いてもらえばいいんですよね?」
と思うかもしれません。
でも、僕はそうは思いません。
買付は、単なる紙ではありません。
価格はいくらなのか。
住宅ローンは通りそうなのか。
手付金はいくら出せるのか。
引渡し時期はいつなのか。
そして、本当にその条件なら買うのか。
買付を出すところから、売主・買主・元付業者との交渉が始まります。
そもそも「買付証明書」とは?
買付証明書は、
「この物件を、この価格・この条件で購入したい」
という買主の意思を売主側へ伝えるための書類です。
「購入申込書」「買付申込書」などと呼ばれることもあります。
法律上、買付証明書そのものに決まった様式があるわけではありません。
また、一般的な買付証明書は売買契約書そのものではないため、提出しただけで通常の不動産売買契約と同じ効力が発生するわけではありません。
ただ、実務では非常に重要です。
口頭で、
「4,000万円なら買います」
と言うだけではなく、
- 購入希望価格
- 融資利用の有無
- 手付金
- 契約希望日
- 引渡し希望日
- その他の条件
などを書面にして売主へ伝えます。
買付を見れば、「この買主がどこまで本気なのか」がある程度見えます。
「1番手だから絶対買える」ではない
買付を一番最初に提出すると、
「これで1番手だから買えますよね?」
と聞かれることがあります。
でも、必ずしもそうではありません。
例えば、
Aさん
4,800万円・住宅ローン事前審査前
Bさん
5,000万円満額・現金購入
という2件の買付が入ったら、売主がBさんを選ぶこともあります。
売主にとって重要なのは順番だけではありません。
価格と条件と確実性です。
だから僕らエージェントも、
「1番に買付を出しましたから大丈夫です」
なんて簡単に言ってはいけません。
買付を出す前に、元付業者へ電話する
僕は、いきなりFAXやメールで買付を送るより、先に元付業者へ連絡した方がいいと思っています。
例えば、
「今、他に買付は入っていますか?」
「売主さんは価格交渉できますか?」
「契約時期はいつ頃を希望されていますか?」
「引渡し条件で何かありますか?」
こういうことを確認する。
元付業者も人です。
突然、
「300万円指値した買付を送ったので売主に聞いてください」
より、
「お客様はかなり気に入っています。ただ、この部分を考えて4,700万円なら即決したいと言っています」
と先に説明された方が話をしやすい。
買付の前から交渉は始まっています。
指値するなら「なぜその金額なのか」を考える
買主から、
「とりあえず200万円下げて言ってみてください」
と言われることがあります。
でも、その200万円に理由がない場合があります。
僕なら、
「なぜ200万円なんですか?」
と聞きます。
指値を考えるときには、
- 売出しからどれくらい経っているか
- 周辺の成約相場
- 他の検討者がいるか
- 売主が売却を急いでいるか
- リフォームが必要か
- 売主側に残債があるか
- 過去に価格変更しているか
などを見ます。
そして元付側へ、
「この部分にリフォーム費用がかかるので、この金額なら買いたいというお客様の希望です」
など、理由まで伝える。
「いくらまで下がりますか?」だけでは交渉になりません。
本当に欲しい物件なら、満額をすすめることもある
逆に僕は、
絶対に欲しい物件なら、変に指値しない方がいい
と思っています。
例えば、
「子どもの学校区がここしかダメ」
「このマンションのこの間取りをずっと待っていた」
「他にも内覧者が何組もいる」
という状態。
そこで、
「一応100万円値切ってみましょう」
とやっている間に、満額の買付が入ったら終わりです。
買主からすると、
「100万円安く買えたら嬉しい」
と思うかもしれません。
でも、絶対欲しかった物件を100万円の指値で逃したら、その方が後悔する可能性があります。
だから僕は聞きます。
「100万円下がらないなら、この物件は買わないですか?」
それでも欲しいなら、僕は満額をすすめることがあります。
投資物件の指値は考え方が違う
一方、収益物件は少し違います。
投資の場合、
「この物件じゃないとダメ」
ではないケースが多い。
利回りやキャッシュフロー、融資条件を計算した結果、
「この価格なら買う。でも、この価格では買わない」
という判断があります。
その場合は指値していいと思います。
ただし、
「3,000万円なら買います」
と出して、売主が
「分かりました。3,000万円で売ります」
となった瞬間に、
「やっぱり考えます」
では信用を失います。
指値が通ったら本当に買う。
そこまで買主と確認してから買付を出した方がいいです。
売主が見るのは「金額」だけではない
同じ5,000万円の買付でも、中身は違います。
例えば、
- 現金購入
- 住宅ローン事前審査承認済み
- 住宅ローン事前審査中
- まだ金融機関に相談していない
では、売主から見た安心感が違います。
特に競合する買付が入っているときは、融資条件が重要になります。
だから買付を出す段階で、
「住宅ローンの事前審査はどうなっていますか?」
を必ず確認する。
まだなら、買付と並行して早く進めます。
「買付を出してからローンを考える」では遅いことがある
人気物件では、売主側も確実に契約できる買主を選びたい。
だから、
「5,000万円満額です。ただし住宅ローンが通るかはまだ分かりません」
より、
「5,000万円満額で、事前審査も承認済みです」
の方が強い。
当然ですよね。
不動産エージェントとしては、内覧して気に入ってから初めて資金計画を始めるのではなく、できればその前から、
- 年収
- 勤務先
- 自己資金
- 他の借入
- 借入希望額
くらいは確認しておきたいところです。
手付金は何のために払うのか
次に手付金です。
ここは新人エージェントが曖昧になりやすいところです。
一般的な不動産売買では、契約締結時に買主から売主へ手付金を交付します。
そして解約手付として扱われる場合、原則として相手方が履行に着手するまで、
買主は手付を放棄して解除する。
売主は手付の倍額を現実に提供して解除する。
という仕組みがあります。
実務では契約書に「手付解除期日」を定めるケースも多いので、その契約内容をきちんと確認します。
「手付は後でいいですよ」は勝手にやってはいけない
もう一つ重要です。
お客様から、
「契約日に手付金を準備できないんですけど、後でもいいですか?」
と言われるケースがあります。
ここで宅建業者側が、
「じゃあ後払いでいいですよ」
「分割で払えばいいですよ」
「うちが立て替えますよ」
などとして契約を誘引するのは危険です。
宅建業法では、宅建業者が手付について貸付けその他の信用供与をすることで契約締結を誘引する行為を禁止しています。国土交通省の解釈では、手付の分割受領も信用供与に当たり得ます。
手付金を軽く扱わない。
これはエージェントとして覚えておいた方がいいです。
買付では価格以外の条件も見る
買付というと価格ばかり見ますが、実際には条件交渉もかなりあります。
例えば土地なら、
- 境界を明示するのか
- 確定測量するのか
- 建物を解体して渡すのか
- 現況で渡すのか
中古住宅なら、
- 残置物をどうするか
- 設備の不具合をどうするか
- 修繕して引き渡すのか
- 現況のままなのか
など。
ここを買付段階で曖昧にして、
「価格は決まりました」
だけで契約書作成に進むと、あとから揉めます。
買付は金額交渉だけではなく、契約条件を整理する作業でもあります。
「とりあえず買付」はやらない
結局、僕が新人エージェントに一番伝えたいのはここです。
「とりあえず押さえるために買付を出しましょう」はやらない。
本当にその価格なら買うのか。
融資は大丈夫なのか。
手付金は準備できるのか。
いつ契約できるのか。
条件は何なのか。
そこまで確認してから出す。
買付は、買主の本気度を売主へ伝える書類です。
そして同時に、
エージェント自身の仕事の精度が見られる書類でもあります。
買付を一枚出すだけでも、
「この担当者、ちゃんとしているな」
と思われる人もいれば、
「この人、本当に契約まで進められるのかな」
と思われる人もいます。
不動産売買では、こういう一つひとつの積み重ねが信用になります。
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