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BLOG 不動産ガイド 相続・空き家 安川 亮介

2026/09/14

不動産を使った相続対策はまだ有効?タワマン節税から2027年の評価見直しまで解説

相続対策について調べると、「現金で持っているより不動産を買った方が相続税を抑えられる」という話を聞くことがあります。

これは全く根拠のない話ではありません。不動産には、実際に市場で売買される価格と、相続税を計算するときに使う評価額に差が出ることがあります。その差を利用して、相続財産の評価額を圧縮するという考え方は以前からあります。

ただ、僕は「相続税が下がるから不動産を買いましょう」だけで不動産を買うのはかなり危ないと思っています。

実際、過去にはタワーマンションを使った相続対策が広く知られるようになり、その後評価方法が変更されました。そして今度は、貸付用不動産についても大きな見直しが進んでいます。

今回は、不動産を使った相続対策がなぜ成り立つのか、タワーマンションでは何が起きたのか、オフィスビルなどの収益不動産ではどう考えるのか、そして今後この方法がどう変わっていくのかを整理します。

なぜ「現金を不動産に変えると相続対策になる」と言われるのか

まず基本的なところからです。

例えば1億円の現金を持っていれば、基本的には1億円として相続財産に入ります。

一方、不動産は「1億円で買ったから相続税評価額も1億円」という計算にはなりません。

土地は路線価などを使って評価し、建物は固定資産税評価額を基礎に評価します。そのため、実際に売買されている市場価格と相続税評価額に差が生まれることがあります。

不動産相続対策の基本的な考え方
「不動産を買えば税金が安くなる」というより、実際の市場価格と相続税を計算するときの評価方法が違うことで、相続税評価額が市場価格より低くなる場合がある、という話です。

さらに、その不動産を第三者へ貸している場合、所有者が自由に使える不動産ではなくなるため、土地や建物について一定の評価減が生じる場合があります。

ここが、不動産が相続対策として使われてきた大きな理由の一つです。

例えば1億円の不動産を買っても、評価額が1億円とは限らない

ここはイメージとして理解してもらうのが一番分かりやすいです。

例えば市場では1億円で売買されている収益不動産があったとしても、土地を路線価、建物を固定資産税評価額などで評価していくと、相続税評価額が1億円より低くなるケースがあります。

さらに賃貸中であれば、土地が貸家建付地、建物が貸家として評価されることで、評価額がさらに下がる場合があります。

だから昔から、現金を収益不動産に変えておくことで相続財産の評価額を圧縮する方法が使われてきました。

ただし、ここで「じゃあ1億円の不動産を買えば必ず何千万円も評価を下げられる」と考えるのは違います。土地の場所、建物、賃貸状況、権利関係などによって評価は全く違います。

タワーマンション節税は、なぜあれだけ使われたのか

その中でも一時期かなり有名になったのが、いわゆる「タワーマンション節税」です。

タワーマンションは、同じ建物でも高層階になるほど市場価格が高くなることがあります。眺望が良い、希少性があるなどの理由で、低層階と高層階では実際の売買価格に大きな差が出ることもあります。

ところが以前の相続税評価では、こうした「何階にある部屋なのか」「市場ではどれだけ高く取引されているのか」という要素が、実際の市場価格ほど評価額に反映されないケースがありました。

さらにタワーマンションは戸数が多いため、一戸あたりの土地の持分が小さくなりやすいという特徴もあります。

つまり、例えば市場ではかなり高額で売買されている高層階の部屋なのに、相続税を計算するときの評価額は市場価格と比べてかなり低い、というケースが出てきたわけです。

これが「タワマンを買えば相続税評価額を大きく下げられる」と言われるようになった理由です。

2024年からマンションの相続税評価ルールが変わった

当然ですが、市場価格と相続税評価額の差があまりにも大きくなれば、そのままずっと続くとは限りません。

2024年1月1日以後に相続・贈与で取得する一定の居住用区分所有財産、いわゆる分譲マンションについては、新しい評価方法が導入されました。

マンションの築年数、建物の総階数、所在階、敷地持分など、市場価格との乖離に影響する要素を考慮して相続税評価額を補正する仕組みです。

簡単に言えば、以前のように「市場では非常に高いのに、相続税評価だけ極端に低い」という差をそのまま使いにくくなったということです。

僕はここがかなり重要だと思っています。

「この方法なら相続税を下げられる」と世の中で広く使われるようになると、制度側も当然そこを見ます。今使えている方法が、10年後も同じ条件で使えるとは限りません。

オフィスビルや一棟収益物件でも、実勢価格との評価差はある

相続対策というとタワーマンションばかり話題になりますが、実際には一棟マンション、アパート、オフィスビルなどの収益不動産でも考え方の根本は同じです。

例えば市場では、オフィスビルの価格を考えるときに立地や賃料、稼働率、収益性、将来性などいろいろな要素を見ます。

一方、相続税評価では土地や建物を一定の評価ルールに基づいて計算します。

ここで市場価格と相続税評価額に差が生まれることがあります。

しかもテナントへ貸しているビルであれば、土地や建物に他人の権利が付いているため、一定の条件を満たせば貸家や貸家建付地として評価することになります。

これによって、実際には1億円、2億円という価格で売買される不動産でも、相続税評価額はそれより低くなる場合があります。

ただし「相続直前にオフィスビルを買えばいい」はかなり危ない

ここからが一番注意してほしいところです。

例えば、現金をたくさん持っている方が高齢になってから、相続税を下げる目的で数億円のオフィスビルや賃貸マンションを購入する。

購入価格と相続税評価額に大きな差があるので、「これだけ相続財産を圧縮できます」と提案される。

昔はこういう考え方もかなり使われてきました。

でも、相続直前に不動産を買って評価差だけを取りにいく方法については、今後かなりやりにくくなります。

令和8年度の税制改正では、一定の貸付用不動産について相続税評価方法を見直すことが示されています。

2027年から「相続前5年以内に買った貸付用不動産」の評価が大きく変わる

ここは今、不動産を使った相続対策を考えている方にはかなり重要です。

2027年1月1日以後の相続等については、被相続人などが相続の課税時期前5年以内に購入または新築した一定の貸付用不動産について、従来の評価方法だけではなく、通常の取引価額に相当する金額を基準として評価する方向に変わります。

一定の場合には、取得価格を基礎として地価の変動などを考慮した金額の80%相当額で評価できる仕組みも設けられる予定です。

これが何を意味するのか。

これまでなら、例えば2億円で買った賃貸不動産について、相続税評価額が大きく下がることを期待して購入するケースがありました。

でも今後、相続直前の5年間に取得した一定の貸付用不動産については、「2億円で買ったのに相続税評価は1億円以下になりました」という評価差をそのまま使えないケースが増えるということです。

2027年以降は特に注意
「高齢になってから現金を収益不動産へ変えて、短期間で評価額を圧縮する」という相続対策は、これまでと同じようには使えなくなる可能性があります。

これはオフィスビルにも関係する可能性がある

2024年のマンション評価見直しは、主に居住用の区分所有財産を対象としたものでした。

一方、2027年からの貸付用不動産の見直しは、タワーマンションだけの話ではありません。一定の貸付用不動産が対象になるため、賃貸マンションだけでなく、条件によってはテナントへ貸しているオフィスビルなども関係してきます。

つまり、これまで「タワマン節税は規制されたから、今度は一棟ビルやオフィスビルで」という考え方をしていたとしても、制度はそこまで見始めているということです。

相続対策の商品として不動産を見るのであれば、今後のルール変更まで含めて考えないと危ないと思います。

「通達どおり評価したから絶対大丈夫」とも言い切れない

もう一つ知っておいてほしいのが、2022年の最高裁判決です。

相続した不動産について、財産評価基本通達による評価額と不動産の実際の価値に大きな差があり、相続税負担を大きく減少させる形になっていた事案で、税務署側が鑑定評価額を使って課税したことについて争われました。

最高裁は、この事案について税務署側の評価を認めています。

つまり、「財産評価基本通達の計算式どおりにやったから、それ以上は何をしても絶対大丈夫」ではないということです。

極端に評価差を作る取引をした場合には、取引の経緯や目的などを含めて問題になる可能性があります。

小規模宅地等の特例も不動産相続では重要

ここまで「市場価格と相続税評価額の差」の話をしてきましたが、不動産を使った相続対策にはもう一つ重要な制度があります。

小規模宅地等の特例です。

例えば亡くなった方が住んでいた自宅の土地で一定の要件を満たせば、330㎡まで80%評価を減額できる場合があります。

また、一定の貸付事業用宅地については、200㎡まで50%減額できる場合があります。

かなり大きな制度ですが、当然誰でも使えるわけではありません。

特に貸付事業用宅地については、相続開始前3年以内に新しく貸付事業を始めた土地は原則として対象外になるルールがあります。ここでも、「相続直前に賃貸物件を作ればすぐ節税できる」という単純な話にはなっていません。

節税できても、ダメな不動産を買ったら意味がない

ここが僕は一番伝えたいところです。

仮に税理士さんから、「この物件を買うと相続税評価額をこれだけ下げられます」と言われたとします。

そこで僕なら、まず聞きたいです。

「それは分かりました。でも、この不動産、普通に買ってもいい物件なんですか?」

相続税が1,000万円下がったとしても、相場より2,000万円高く不動産を買っていたら、それが本当に得なのかという話です。

空室が多い、修繕費が高い、賃料が下がる、立地が悪い、融資条件が悪い、出口で売れない。こういう物件なら、相続税だけ下げても資産全体では損をすることがあります。

相続対策より先に見ること
その不動産を相続対策抜きでも買いたいと思えるのか。賃料、利回り、修繕、融資、売却価格まで見たうえで成立している物件なのか。僕ならまずそこを確認します。

借金をすれば相続税が下がるから得、でもない

不動産相続対策では、借入を利用することもあります。

借入金は一定の要件のもと相続財産から控除する債務になるため、「借金して不動産を買えばさらに相続税が下がる」と説明されるこ

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