CURATION
2024/07/06
登記簿を取って終わりじゃない。中西エージェントによる物件調査の実務研修
Revoでは、不動産エージェント向けに実務研修を定期的に行っています。
今回は、長年不動産実務に携わってきたベテランエージェントの中西さんによる、売買物件の調査研修です。
登記簿、公図、地積測量図、境界、固定資産評価証明書、抵当権、根抵当権、共同担保、決済時の抵当権抹消まで、実際の取引で「どこを見ればいいのか」をかなり具体的に話してもらいました。
宅建の勉強で言葉を覚えていても、実際の売買現場では、
「この登記を見て、次に何を確認するのか」
「この図面はどこまで信用していいのか」
「このまま契約して大丈夫なのか」
という判断が必要になります。
今回の研修は、まさにその部分の話です。
契約書の条文を「意味まで分かって」使えるようにする
研修の中で中西さんが最初に強く話していたのが、売買契約書の条文です。
宅建を取っただけでは、実務ですぐに売買契約書を扱えるようになるわけではありません。
お客様の前で難しい専門用語を並べればいいわけでもありませんが、逆に売買条件や契約条項について聞かれた時に説明できないのも困ります。
中西さんは、
「売買契約書の条文を、スラスラ言えるくらいまで理解してほしい」
という話をしていました。
例えば、売買契約書には、買主の完全な所有権の行使を妨げる抵当権などの負担を、売主が所有権移転までに除去・抹消するという内容があります。
文章だけ覚えるのではなく、
「なぜこの条文があるのか」
「登記簿のどこを見れば、その問題が分かるのか」
までつなげて理解することが大事です。
ネットで取れる時代でも、法務局へ行く意味はある
現在は登記事項証明書などをオンラインで取得できるので、毎回法務局へ行かなければ仕事ができないわけではありません。
それでも中西さんは、特に経験の浅いエージェントには、
「法務局に行った方がいい」
と話していました。
理由の一つは、分からないことを職員へ確認できるからです。
公図を見ても意味が分からない部分がある。
地番が分からない。
住居表示やマンション名しか分からない。
取得した資料に見慣れない記載がある。
そういう時に、そのまま自己判断せず確認する。
今はネットで何でも取れるからこそ、分からないままクリックして資料だけ集める人もいます。
でも、資料を取ることと、資料を読めることは別です。
公図を見て「これが境界だ」と決めつけない
土地の調査でよく使うのが公図です。
ただし、公図を見てその線をそのまま現地の正確な境界だと思うのは危険です。
公図は、隣接する土地との位置関係を確認するために非常に重要な資料ですが、すべての公図が現地の形状や距離を高い精度で示しているわけではありません。
土地の形状や境界を確認する時には、地積測量図、現地の境界標、過去の測量資料なども合わせて確認します。
特に古い地積測量図では、現在と測量精度が違う場合もあります。
研修でも、古い測量図だからという理由だけで必ず測量し直すという話ではなく、
「この資料で本当に取引して大丈夫なのか」
を考えることが重要だという話が出ていました。
境界標があるから必ず確定測量、ではない
土地売買では「確定測量は毎回必要ですか?」という質問も出ました。
ここは、何でも「確定測量しましょう」で済ませる話ではありません。
境界標がきちんと存在し、売主が買主へ境界を明示でき、過去の測量資料にも問題がないのであれば、必ずしもすべての取引で新たな確定測量をするとは限りません。
一方で、境界標が見つからない、資料と現地が合わない、隣接地との認識が違うなどの問題があれば、土地家屋調査士へ相談し、測量を検討する必要があります。
隣接所有者との立会いが難しい場合などには、筆界特定制度という選択肢もあります。
筆界特定制度は、法務局が新しく境界を作る制度ではなく、登記された時から存在する筆界について、その位置や範囲を調査して明らかにする制度です。
登記簿では抵当権だけを見ればいいわけではない
登記事項証明書を見る時には、所有者だけ確認して終わりではありません。
差押え、仮登記、買戻し特約、抵当権、根抵当権、共同担保など、取引に影響する登記がないかを確認します。
抵当権は、住宅ローンなどでよく出てきます。
売主に住宅ローン残債があり、抵当権が設定されている場合でも、それ自体は珍しいことではありません。
大事なのは、決済時にきちんと抹消できるかを事前に確認することです。
ローンを完済していても、登記上の抵当権が自動的に消えるわけではありません。
売主が、
「もうローンは返したから大丈夫です」
と言っていても、登記簿に抵当権が残っていれば抹消手続きが必要です。
共同担保目録は「必ず見る」くらいの習慣にする
中西さんがかなり強く話していたのが共同担保目録です。
登記事項証明書を取得する際、共同担保目録があるかどうかを確認する。
これは習慣にした方がいいという話でした。
例えば、売却する土地・建物だけに抵当権が付いていると思っていたら、別の不動産も同じ債権の共同担保になっている場合があります。
逆に、今回売却する不動産が別の借入れの共同担保に入っている可能性もあります。
それを知らずに話を進めて、決済直前に、
「この物件だけでは抵当権を外せません」
となったら大変です。
だから、登記事項証明書を取る時点から共同担保まで見る。
小さな習慣ですが、売買実務ではかなり重要です。
根抵当権は「極度額」だけ見て終わらない
研修では、抵当権と根抵当権の違いについても話がありました。
根抵当権では、一定の範囲の債権を、設定された極度額まで担保します。
事業者の融資などで使われることがあります。
売買する物件に根抵当権が設定されている場合も、最終的に買主へ完全な所有権を移転するためには、必要な抹消手続きを進めなければなりません。
ここで大事なのは、
「登記簿に根抵当権がある」
と分かった時点で終わらず、
「この売買で本当に抹消できるのか」
「金融機関との手続きにどのくらい時間がかかるのか」
まで確認しておくことです。
決済当日に抵当権が消せない、では遅い
研修中には、実際に抵当権の抹消が予定通りできず、決済に影響した事例も話題になりました。
これは極端な事例ですが、売買契約を締結して、引越し準備まで進んでから、
「抵当権が外せません」
となったら、買主にも売主にも大きな影響があります。
だから抵当権抹消は、決済当日に初めて確認する話ではありません。
金融機関へ事前に連絡し、必要書類、抹消条件、完済金額、書類の受領方法、必要日数などを確認する。
必要に応じて司法書士とも事前に打ち合わせます。
売主の借入れを買主の残代金で完済し、そのまま抵当権抹消と所有権移転を進める取引もあります。
この場合は特に、金融機関、司法書士、仲介会社の段取りが重要になります。
固定資産評価証明書・公課証明書はかなり重要
中西さんが今回の研修で何度も話していた資料の一つが、固定資産評価証明書や公課証明書です。
買主の所有権移転登記などにかかる費用を司法書士へ見積もってもらう時にも、固定資産評価額の情報が必要になります。
そのため研修では、
登記事項証明書、必要に応じて公図、そして評価証明等をそろえて司法書士へ見積もりを依頼する
という実務の流れが説明されていました。
また、公課証明書には課税額を確認できる情報が記載されるため、固定資産税・都市計画税の精算を考える時にも使います。
ただ書類を取るのではなく、
「何のためにこの書類を取るのか」
まで理解しておくことが大事です。
登記面積と課税面積が違うこともある
評価証明等を見ることで、登記簿だけでは気付きにくい違いが見つかることがあります。
例えば、
登記されている建物面積と課税されている面積が違う。
増築した部分が課税上は把握されているのに、登記上は反映されていない。
こうしたケースです。
融資を利用する取引では、登記と現況に食い違いがあることで金融機関から追加確認を求められたり、是正が必要になる場合もあります。
だから、
「契約が決まってから調べればいい」
ではなく、売却の相談を受けた段階から早めに資料を集めておく。
中西さんはこの考え方をかなり大事にしていました。
売却相談カードは「営業メモ」ではなくチェックリスト
後半では、Revoで使っている売却相談カードについても話がありました。
売却相談を受けた時に、
売却理由
希望価格
他社への相談状況
紹介なのか、問い合わせなのか
面談予定
相続などの問題がないか
といった情報を書いていきます。
これは単なる顧客メモではありません。
書けていない項目が、そのまま「まだ聞けていないこと」になる。
つまり、チェックリストになるわけです。
頭の中だけで案件を管理すると、
「そういえば売却理由をちゃんと聞いてなかった」
「共有名義なのを後から知った」
ということが起こります。
カードに落とすことで、抜けが見える。
ベテランほどこういう地味な作業をきちんとやっているというのは、今回の研修で印象的だった部分です。
媒介を取った後は、第三者が見ても分かる状態にする
媒介契約を取得した後は、さらに物件情報を細かく整理します。
地番、住居表示、所有者、共有者、土地の地目、現況、接道、境界標、売却理由、相続、本人確認、物件の問題点など。
そこまで書いておく理由は、担当者本人だけが分かればいい仕事にしないためです。
第三者が見ても、
「この物件は今どういう状態なのか」
「何が終わっていて、何が未確認なのか」
が分かるようにする。
問い合わせの履歴、買付け、価格変更、売主とのやり取りなども残しておけば、後から販売戦略を見直す材料にもなります。
不動産営業というと、お客様と話す力ばかり注目されます。
でも、こういう記録をきちんと残せることも実務力です。
中古住宅ではインスペクションという選択肢も知っておく
研修では、既存住宅のインスペクションについても話が広がりました。
インスペクション、正式には建物状況調査は、既存住宅の劣化状況などを専門家が調査する仕組みです。国土交通省も既存住宅流通で活用を進めています。
中古住宅を売買する時、
「見た感じ問題なさそうです」
だけで判断するのと、専門家の調査を入れるのとでは意味が違います。
もちろん、すべての物件で必ず実施するという話ではありません。
築年数、建物の状態、売主・買主の考え方などによって判断します。
大事なのは、エージェントが制度自体を知らない状態にしないことです。
ベテランの実務は「怪しいところを放置しない」
今回の中西さんの研修を聞いていると、一つ一つは派手な話ではありません。
登記簿を見る。
共同担保目録を見る。
評価証明を取る。
公図と地積測量図を見る。
境界標を確認する。
抵当権があれば金融機関へ確認する。
分からなければ法務局、土地家屋調査士、司法書士などの専門家へ聞く。
でも、この積み重ねが不動産売買の事故を防ぎます。
不動産は金額が大きいので、「多分大丈夫だと思います」で進めて、後から問題が出た時の影響も大きいです。
ベテランの実務を見ていると、知識量だけではなく、
「これちょっとおかしいな」と思ったところを、そのまま放置しない。
そこが一番大事なんだと思います。
Revoでは、このような不動産エージェント・不動産営業マン向けの実務研修を無料で発信しています。
リアルタイム研修や過去の研修動画の公開、実務についての相談なども行っています。
今回のような売買調査・契約・決済の実務を学びたい方は、オープンチャット「不動産エージェント研修(Revo)」にご参加ください。
