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BLOG 不動産研修 売買実務 売却・査定 安川 亮介

2026/09/10

不動産査定書の作り方。価格だけ出すな、根拠を説明できる査定をしよう

こんにちは、Revoの安川です。

今回は、売却査定をするときの査定書の準備、資料の集め方、査定価格の考え方、そしてお客様への説明方法についてまとめます。

査定というと、最終的な「いくらです」という数字ばかり気にする人がいます。でも僕は、査定価格そのものより、その価格になった根拠を説明できることの方が大事だと思っています。

特に一棟収益物件になると、「周辺の物件がこのくらいだから」だけでは全然足りません。収益性、土地値、修繕状況、融資、共有関係など、見るところが一気に増えます。

査定書は「価格を見せる紙」ではない

Revoでは、案件によっては査定書と添付資料を合わせてかなりのボリュームになります。

60ページ、場合によっては100ページ近くになることもあります。

別にページ数を増やすことが目的ではありません。

対象物件について調べるべきことを調べて、その根拠となる資料を一冊にまとめた結果、そのくらいになるということです。

僕が大事にしているのは、

最初に価格を見せないこと。

いきなり、

「査定価格は3,500万円です」

から入っても、お客様からすると「高い」「安い」で終わります。

そうではなく、

「どうやってこの金額を出したのか」

を最初から順番に説明する。

そのための査定書です。

査定書を作ったら、自分で最初から最後まで読む

これは当たり前なんですが、査定書を作成したら、まず自分で全部読んでください。

査定ソフトが自動で作ってくれたから、そのまま持っていく。

これはダメです。

誤った事例が入っているかもしれない。

今回の物件には必要ないページが入っているかもしれない。

逆に必要な調査資料が抜けているかもしれません。

査定ソフトは便利ですが、最後に査定するのはエージェントです。

僕は、一冊の本を作るくらいの感覚で査定書を準備した方がいいと思っています。

紙で持っていくなら、バラバラの資料ではなく、製本テープなどを使って一冊にまとめてもいい。

「ちゃんとこの物件について調べてきたんだな」

と伝わる資料を作ってください。

査定書を出す前に、まず前振りをする

いきなり机に査定書を出して、

「こちらです」

ではありません。

まず、

「今回の査定では、周辺の販売事例や成約事例、土地の価格、物件の個別性などを確認して査定しています。査定システムも使っていますが、システムが出した数字をそのまま査定価格にしているわけではありません。今日は、どういう根拠でこの価格になったのかを最初から説明します」

くらいの前振りをしてから始めます。

Revoでは「査定番頭」という査定支援システムも利用しています。

査定番頭では周辺の流通事例・成約事例、個別性評価などを使って査定提案書を作成できます。現在はマンション、戸建て、土地、アパートなど複数の物件種別に対応しています。

ただし、

「システムがこう言っているから、この金額です」ではありません。

ここは勘違いしないでください。

査定書は根拠から順番に説明する

説明するときは、僕は価格ページから入りません。

まず対象物件そのものを確認します。

所在地、土地面積、建物面積、築年数、構造など、

「今回査定するのは、この物件で間違いないですね」

というところからです。

その後、地図や公的資料、周辺事例などを順番に見せます。

説明中は、価格ページだけ先に見られて「高い・安い」の話だけにならないよう、こちらでページを進めながら説明します。

お客様をコントロールするためではありません。

査定価格より先に、その価格を出した根拠を理解してもらうためです。

査定書に入れておきたい基本資料

物件によって必要資料は変わりますが、売却査定では僕ならまず以下を確認します。

  • 対象物件の登記事項証明書、地図・公図などの登記関係資料
  • 広域図、狭域図、用途地域など都市計画関係の資料
  • 路線価、公示地価・基準地価など土地価格を見る資料
  • 周辺の販売事例・成約事例
  • ハザード、上下水道、道路、埋蔵文化財、学校区など物件に関係する調査資料

戸建てや土地なら、接道や都市計画、建築関係の情報も重要です。

「全部入れればいい」ではなく、その物件の価格判断に必要な資料を入れるという考え方です。

査定方法は一つではない

査定には代表的な考え方として、

「取引事例比較法」

「原価法」

「収益還元法」

などがあります。

居住用マンションなら、近隣の類似した成約事例との比較がかなり重要になります。

一方、一棟収益物件なら収益性を見る必要がありますし、土地の価値が強い物件なら土地値も無視できません。

つまり、

物件によって、重く見る査定方法が違う。

全部の物件を同じ計算式にはめればいいわけではありません。

販売事例と成約事例を分けて見る

これも大事です。

今5,000万円で売りに出ているから、この物件も5,000万円。

ではありません。

5,000万円で売りに出していて、半年売れていない可能性もあります。

販売価格は「売主が現在希望している価格」。

成約価格は「実際に市場で取引された価格」。

意味が違います。

だから僕は販売事例と成約事例を分けて見ます。

査定書にも一覧だけではなく、使う事例については詳細が分かる資料を入れます。

似ていない事例を数合わせのために入れる必要はありません。

使える事例を、できるだけ多く集める。

その上で比較してください。

項目別評価を「何となく全部3」にしない

査定番頭などでは、物件の個別性について1〜5などで評価する項目があります。

ここを全部3にする人がいます。

僕はこれはダメだと思っています。

別に無理やり1や5を付けろという意味ではありません。

駅距離。

道路。

土地の形。

日当たり。

周辺環境。

建物の状態。

一つずつ見て、

「なぜ3なのか」

「なぜ4なのか」

を考えてください。

査定は結局、こういう細かい判断の積み重ねです。

最後に「4つの価格」を説明する

資料を順番に見た最後に、ようやく価格の話をします。

僕はここで、価格を一つだけ伝えるのではなく、

査定価格、売出価格、成約価格、希望価格

を分けて説明します。

査定価格は、調査した資料や事例から考えた価格。

売出価格は、実際に市場へ出す価格。

成約価格は、最終的に買主との合意によって決まる価格。

そして希望価格は、売主自身が「このくらいで売りたい」と考えている価格です。

これらは全部同じとは限りません。

査定価格3,500万円だから、3,500万円で売り出さないといけないわけでもありません。

売主の事情、市況、販売戦略まで考えて売出価格を決めます。

一棟収益物件の査定は、さらに見る資料が増える

ここからは一棟マンション、一棟アパート、一棟ビルなど収益物件の査定です。

収益物件の場合、一般的な土地・建物資料だけでは足りません。

最初に確認したいのがレントロールです。

現在いくらの賃料で貸しているのか。

何戸入居しているのか。

何戸空いているのか。

駐車場やその他収入はいくらあるのか。

管理会社からの送金明細なども確認して、現在の実際の収入を把握します。

想定賃料ではなく、まず現状を見る。

ここからです。

固定資産税評価証明書も確認する

次に固定資産税関係です。

確認したいのは、大きく二つあります。

一つは、毎年どのくらい固定資産税等がかかっているのか。

収益物件は家賃がそのまま利益になるわけではありません。固定資産税等も年間のランニングコストなので、収支を見るうえで必要です。

もう一つは固定資産税評価額です。

土地や建物の評価を検討する際の一つの基礎資料になります。

ただし、ここは注意してください。

固定資産税評価額=銀行の担保評価でも、相続税評価額でもありません。

金融機関はそれぞれ独自の基準で担保評価をしますし、相続税についても土地・建物や利用状況などによって評価方法が異なります。

税務を目的に購入を検討するお客様なら、具体的な税額計算は税理士へ確認してもらってください。

共有名義なら「誰が売ると言っているのか」を必ず確認する

今回、社内で実際にあった一棟収益物件の査定では、共有名義の物件がありました。

こういう案件では、ここがかなり重要です。

共有者は何人いるのか。

持分割合はどうなっているのか。

そして、共有者全員に売却意思があるのか。

まず登記事項証明書を取得して所有関係を確認します。

その上で、お客様にもヒアリングしてください。

依頼してきた一人だけが、

「売りたいです」

と言っている状態で、他の共有者が何も知らない可能性もあります。

査定価格を出す前に、そもそもどういう所有関係なのかを把握する必要があります。

築古の収益物件では修繕履歴を必ず確認する

一棟収益なら、修繕履歴もかなり重要です。

外壁。

屋上防水。

給排水管。

共用部。

各住戸。

過去にどのような修繕をしてきたのか。

そして今後、大規模な修繕が必要になりそうなのか。

例えば築40年の一棟物件で、これまでほとんど修繕していないのであれば、買主は購入後の修繕費まで考えます。

金融機関も物件状態を含めて判断します。

だから、

「今、家賃がこれだけ入っています」

だけでは査定できません。

法定耐用年数を超えている=融資が出ない、ではない

築古物件では融資も重要です。

例えば築40年の鉄骨造など、税務上の法定耐用年数を超えている物件では、融資期間などの条件が厳しくなるケースがあります。

ただし、

「耐用年数を超えたから融資は出ません」

とは言えません。

金融機関によって考え方は違います。

土地の担保価値を見る金融機関もあれば、収益性を見るところもあります。

買主自身の属性や既存資産、取引実績も影響します。

だから売却査定をするときも、

「この価格なら買える人がいるのか」

「この価格で金融機関がどう評価するのか」

まで考える必要があります。

一棟収益を「利回り○%だから○円」で終わらせない

特に今回社内で相談があった物件は、築年数だけを見ると収益還元で強い価格を出しにくい物件でした。

でも、土地価格が強いエリアにある。

ここで、

「この辺なら利回り8%だから、年間収入を8%で割ってこの価格ですね」

だけで終わったらダメです。

収益性だけではなく、

土地としての価値。

将来的な建替え需要。

業者が買い取るならいくらなのか。

投資家へ売るならいくらなのか。

こういう視点も一緒に見ます。

建物は古いけど、土地が強い。

こういう物件は普通にあります。

だから、一棟収益=収益還元だけで査定するという考え方にしないでください。

土地値を見るなら複数の指標を使う

土地の価値を見る場合も、一つの数字だけで決めません。

周辺の土地の販売事例・成約事例を集めます。

ただ、商業地などでは似た土地の成約事例がほとんど出ないこともあります。

その場合は、

公示地価・基準地価。

路線価。

固定資産税評価額。

周辺の販売事例。

実際の成約事例。

こういった複数の指標を見ます。

一つの数字を「正解」にするのではなく、

いろんな方向から見ても、この辺だよね

という価格帯を探していくイメージです。

一棟収益は「ふれんず」だけで事例を探さない

一棟収益物件なら、事例の探し方も変わります。

「ふれんず」など通常の不動産流通情報だけではなく、投資家向け物件が掲載されている楽待や健美家なども確認します。

一棟収益として今どのくらいの価格、どのくらいの利回りで販売されているのか。

土地として売られている類似物件はないか。

両方見ます。

ただし、ネットに掲載されているのは基本的に売出価格です。

成約価格と同じではありません。

ここは必ず分けて考えてください。

AIにも分析させる。ただし、AIに査定させて終わらない

最近は、AIもかなり使えます。

今回のような案件なら、

登記事項証明書。

地図。

レントロール。

修繕履歴。

周辺事例。

公示地価。

固定資産税関係資料。

お客様からヒアリングした情報。

こういった査定に必要な資料を一度Google Driveなどに整理します。

資料がそろった段階で、会社で利用を認めているGeminiなどのAIへ必要な情報を読み込ませ、

「この物件を収益性、土地値、周辺事例から見た場合、どのくらいの価格帯が考えられるか」

と分析させる。

これは普通に使っていいと思います。

ただし、顧客の個人情報や機密情報を外部AIへそのまま入れないこと。Revoで認められた利用環境を使い、必要に応じて個人名や住所などを削除・匿名化してください。

そして一番大事なのは、

AIが4,800万円と言ったから、査定価格4,800万円。

には絶対にしないことです。

AIが出した金額について、

「なぜ?」

を確認する。

事例と合っているのか。

土地値と合っているのか。

収益還元で見たらどうなのか。

現地の状況を反映できているのか。

最後に決めるのはエージェントです。

査定番頭もAIも「答え」ではなく道具

査定ソフト。

AI。

公示地価。

路線価。

成約事例。

全部、査定をするための道具です。

どれか一つが正解を教えてくれるわけではありません。

僕がエージェントに求めているのは、

「このソフトで3,800万円と出ました」

ではなく、

「この事例とこの土地値、この収益性を考えると、僕はこの価格が妥当だと思います」

まで言えることです。

そのために査定書を作ります。

査定書の厚さより「説明できるか」の方が大事

60ページ、100ページの査定書を作っただけで仕事をした気になってはいけません。

100ページあっても、何が書いてあるか本人が分からなければ意味がない。

逆に、必要な資料が50ページで全部そろっていて、全部自分の言葉で説明できるなら、それでいいです。

査定価格を出すこと自体は、今はAIでもできます。

でも、

なぜこの価格なのか。

他社の査定価格と何が違うのか。

いくらで売り出すのか。

どのくらいで成約する可能性を見ているのか。

どういう販売戦略でいくのか。

ここまで説明するのが、不動産エージェントの仕事だと僕は思っています。

Revoでは、不動産エージェント・不動産営業マン向けに、今回のような実務研修を無料で発信しています。売却査定、媒介取得、物件調査、契約など、現場で使える内容を学びたい方は、オープンチャット「不動産エージェント研修(Revo)」にご参加ください。

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