CURATION
2026/10/20
相続放棄32万件。不動産を引き継ぐ前に考えたいこと
Revoの安川亮介です。
相続放棄が年間32万件を超えた、というニュースが話題になっています。
財産をもらえるのに、なぜ放棄するのか。そう思う方もいるかもしれません。
でも、不動産は持っていれば必ずお金になるわけではないんですよ。買い手がつくか、維持にいくらかかるか、借金も含めて何を引き継ぐのか。このあたりを見ないと判断できません。
今回は、この32万件という数字からわかることと、相続する前に考えたいことを整理します。
32万件という数字から、どこまでわかるのか
最高裁の司法統計によると、相続放棄の申述受理事件の新受件数は、2024年の30万8,750件から、2025年には32万3,524件に増えています。これは裁判所が新たに受け付けた事件の数です。亡くなった方の人数でも、放棄された土地の数でもありません。出典:最高裁・令和7年司法統計年報
ここで大事なのは、この件数だけでは放棄の理由まではわからないことです。借金の問題なのか、不動産の維持負担なのか、家族の事情なのか。それぞれがどれだけ増加に影響したかは、この統計からは判断できません。
「増えている」という事実に、自分の考える原因をくっつけてしまうと、数字の読み方としては危ういんですよ。
相続税の負担も、正確な数字で考えたい
国税庁によると、2024年分の相続税の課税割合は10.4%です。亡くなった方160万5,378人に対し、相続税額のある申告に係る被相続人は16万6,730人でした。これは相続人の10.4%という意味ではなく、相続放棄の理由を示す数字でもありません。出典:国税庁・令和6年分相続税の申告事績
最高税率の55%も、遺産全体に一律でかかる率ではありません。基礎控除後の課税遺産総額を法定相続分で分けた金額について、6億円を超える部分にかかる最高の税率です。出典:国税庁・相続税の税率
もちろん、この数字を出せば納税に困る人の問題がなくなるわけではない。財産の多くが不動産なら、手元の現金が足りないこともあります。売却まで時間がかかることや、住み続けたい家をどうするかも、切実な問題です。
だからこそ、税負担が相続放棄に影響する可能性まで否定せず、実際の事情を確かめて議論したいと思います。
「土地がある」と「お金になる」は違う
買い手がつき、売却費用や税金を差し引いてもお金が残る不動産なら、売って納税資金を用意する選択肢を検討できます。
一方で、買いたい人が見つからない土地や、建物の解体・修繕などに大きな費用がかかる不動産もあります。持ち続ける管理の負担まで考えると、受け継ぐことをためらう理由になり得ます。
土地の相続税評価は、路線価方式や倍率方式などで行われます。その評価額が、そのまますぐ売れる価格や手元に入る現金を保証するものではありません。評価方法の出典:国税庁・土地家屋の評価
仮に相続税がなくなっても、買い手が生まれるわけでも、草刈りや建物管理の負担がなくなるわけでもない。ここは、不動産の需要や維持費の問題として考える必要があるんですよ。
ただし、「相続放棄された財産は全部価値がない」という決めつけもできません。相続は土地だけで決まる話ではないからです。
相続放棄は、いらない土地だけを外す手続きではない
相続放棄は、亡くなった方の権利や義務を一切受け継がないために、家庭裁判所へ申述する手続きです。「預金はもらうけれど、この土地だけ相続放棄する」という使い方はできません。出典:裁判所・相続の放棄の申述
また、放棄すればすぐに国が土地を引き取るわけでもありません。相続する人がいなくなった場合も、相続財産清算人による債務の清算や、場合によっては特別縁故者への財産分与などを経て、残った財産が国庫に帰属する仕組みです。出典:裁判所・相続財産清算人の選任
決める前に、売れるか、いくら残るかを確かめる
確認したいのは、財産と借金の全体像、不動産が売れる見込み、売却までの期間、費用を引いた手残り、持ち続ける場合の負担です。
相続放棄の申述は、原則として自分のために相続が始まったことを知ったときから3か月以内。相続税の申告・納税は、原則として亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内で、期限も別です。相続放棄の期限:裁判所/相続税の期限:国税庁
放棄を考えているなら、財産を売ったり処分したりする前に弁護士へ。税金は税理士へ。不動産会社には、査定額だけでなく、その条件で本当に買い手を探せるかまで確認してほしいと思います。
税金への賛否を言う前に、その家族が何に困っているのかを見る。相続放棄の話は、そこから始めるのが大事だと思うんですけどね。
※2026年10月時点の公表資料に基づく一般的な情報です。個別の法律・税務判断は専門家にご相談ください。
売れないと決めつける前に、一度相談してほしい
Revoでは、3年間売れなかった不動産の売却につながり、お客様に喜んでいただいたこともあります。もちろん、すべての不動産が必ず売れるとは言いません。でも、売れないと思い込んでいた不動産でも、条件や売り方を見直す余地があるかもしれません。
北九州に拠点を構えてから、空き家のご相談も増えています。空き家は所有者だけでなく、近隣や地域、自治体にも関わる問題です。だからこそ、相続が起きてから慌てる前に、売れる見込みや管理の負担を整理しておいてほしいと思っています。
北九州市は、2025年10月の市長会見で高齢化率が政令指定都市の中で最も高いと説明されています。人口減少や高齢化などを背景に、空き家の管理・活用は地域全体の課題になっています。出典:北九州市・2025年10月の市長会見
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